CAN-SLIM投資法とは?

この記事を読むと

  • 成長株銘柄をスクリーニングするCAN-SLIM投資法を学べます
  • 過去の大化け銘柄に共通する特徴を知ることができます
  • 一度CAN-SLIM投資法を学んだ方も復習できる内容です
  • 投資ルールが定まっていない方の良き見本となります

『CAN-SLIM(キャンスリム)投資法』とは、伝説的トレーダーとして有名なウイリアム・J・オニールが提唱する銘柄スクリーニング法です。

それは長期的にわたって継続して上昇する可能性が高い企業を機械的に選び出す手法です。

この投資法は、1880年代まで株式市場をさかのぼり、大化け銘柄1000以上を詳細に分析した結果、生み出された手法と言われています。

その大化け銘柄に共通する特徴や規則性を体系的にまとめたものが、この『CAN-SLIM投資法』です。

本記事では、成功者に学ぶ「CAN-SLIM投資法」の要点を解説していきます。

ウィリアム・J・オニールとは

ウォール街で最も成功した投資家のひとりと言われています。

株式市場で得た利益で30歳にしてニューヨーク証券取引所の会員権を獲得し、機関投資家向けの調査会社『ウィリアム・オニール・アンド・カンパニー』をロサンゼルスに設立しました。

世界中の一流投資機関600社を顧客に抱え、『インベスターズ・ビジネス・デイリー』紙と関連サイトinvestors.comの創設者です。

インベスターズ・ビジネス・デイリーは通称"IBD"とも言われ、投資家向けに『Leader board』『SwingTrader』『MarketSmith』などの投資ツールを提供しています。

CAN-SLIMとは?

「CAN-SLIM」は、銘柄選定で重要となる7項目の頭文字を表しています。

それぞれの内容は次の通りです。

CAN-SLIM

C = Current Quarterly Earnings
(当期四半期のEPSと売上)
A = Annual Earnings Increases
(年間EPSの増加、高いROE水準)
N = New products,New Management,New Highs
(新製品や新サービス・新経営陣・新高値を付け始めた銘柄)
S = Supply and Demand
(株式の需要と供給:重要ポイントで需要が高いこと)
L = Leader or Laggard
(主導銘柄か、停滞銘柄か)
I = Institutional Sponsorship
(機関投資家による保有)
M = Market Direction
(株式市場の方向)

次に、それぞれの項目にチェックポイントを見ていきます。

C = Current Quarterly Earnings

Cは当期四半期のEPS(1株当たり利益)と売上です。特にEPSは最重要の指標です。

チェックリスト

  • 当期四半期のEPS成長率(前年同期比)は25%以上の上昇※強気相場では40%以上
  • 過去2四半期続けて、大幅にEPSが増加
  • 直近3四半期で売上増加率が加速している
  • 売上とEPSが両方、直近3四半期で急速に伸びた場合は特に注目
  • EPSのコンセンサス予想が今後2年間上昇軌道に乗ると予測

 

補足

  • 2四半期連続でEPS成長率が減少した場合は注意(前回の成長率に比べ2/3以上を目安)
  • 同業他社でEPS成長率が高い銘柄が少なくとも1つ以上存在
  • 過去数ヶ月の間にコンセンサス予想が何回上方修正されたか
  • 直近四半期EPSが、コンセンサス予想をどの程度上回ったか
  • 強気相場の後半ではEPS成長率が100%を超えているにもかかわらず株価が頭打ちする場合もある

オニール自身は強気相場において、EPS成長率が40~500%、あるいはそれ以上と飛躍的にEPSが増加した銘柄に絞っていると述べています。

A = Annual Earnings Increases

Aは年間EPSの増加です。

最新の決算報告が一時的なものでないことや企業の質が高いことを確認するためには、年間のEPSの増加を確認することです。

チェックリスト

  • 過去3年連続で年間EPSが25%以上増加
  • EPS Stability(後述)が25以下
  • ROE(株主資本利益率)が17%以上(理想は25%〜50%)

補足

  • IBDが提供するEarning Stability指数が、20〜25以下
  • IBDが提供するEPS指数が他より高い銘柄

Earning Stability指数とは、EPSの安定性指数で、過去3年間の年間EPSの安定性を指数化したものです。

この指数が、30以上を示す企業は成長の見込みが低く、年間EPSが、25%以上の成長率を達成している企業なら、安定性指数が1〜3になることもあります。

EPS指数とは、企業の直近2四半期のEPS成長率(前年同期比)が、過去3年間でどれほど成長したかを測定し、指数化したものです。

1(最低)〜99(最高)で表され、その他の企業と比較できます。

EPS指数99の銘柄は、年間EPSと当期四半期EPSの両方で、残り99%の企業よりも良い成績出会ったことを意味します。

N = New products,New Management,New Highs

Nは新製品、新経営陣、新高値という意味です。

重要な新製品新サービス新経営陣、あるいは業界の需要の拡大価格上昇革新的技術の開発など、産業状況に見られた新たな変化などは収益を伸ばす原動力となります。

ただし、何よりも重要なのは正しく形成されたベースから抜け出て、出来高を伴って新高値に近づいたり、新高値を付けた銘柄を買うことです。

チェックリスト

  • 成長著しい新興企業
  • 新しい画期的な製品やサービスを提供
  • 素晴らしい経営陣
  • 正しい株価ベースを抜けて新高値に近づくor新高値を付ける

S = Supply and Demand

Sは株式の需要と供給を意味します。

株式市場における需要と供給の基本原理は、ウォール街のどんなアナリストの意見よりも重要です。

重要な基本原理

  • 発行済み株式数が50億株ある銘柄は、その供給量の多さゆえに、なかなか株価は動かず、上昇時には多くの出来高(需要)が必要となる。
  • 発行済み株式数が5000万株の銘柄は、その供給量が少ないため、需要が増えれば加速度的に上昇する可能性があるが、一方で値下がりするのも速い。(資本の少ない小型株は上昇・下落の値動きが激しくなる。)

チェックリスト

  • 経営陣が発行済株式の1%〜3%以上を保有(中小型株なら3%以上)
  • 長期間、継続的に自社株買いを行なっている企業
  • 株価下落時で出来高が枯れてきているか、上昇時に出来高を伴っているか
  • ブレイクアウト時の出来高は40〜50%以上が望ましい

メモ

  • 過度な株式分割に注意(2〜3回目の株式分割は、株価が天井をうつ傾向にある。)
  • 過去2〜3年の間に総資本に対する負債率が減少している企業は検討の余地あり
  • 週足チャートで株価が高値圏で引けたのか、安値圏で引けたのか注目
  • U/D Vol Ratioが1.0以上
    ※U/D Vol Ratio とは、ある銘柄における一定期間の株価上昇日の出来高合計と株価下降日の出来高合計を百分率(%)で計算したもの。IBDでは50日(約2カ月)集計であるため、あくまで短期的なトレンドであり、突発的な出来高上昇の影響を受けやすい点は考慮が必要です。)
  • Acc/Dis RatingがB以上
    ※Acc/Dis Ratingとは、他銘柄と比較して、相対的に機関投資家による買い集め・売り抜けの回数を評価したものです。A+(最高)〜E(最低)で評価されます。)

CAN-SLIMの条件を満たす銘柄ならば、総資本の規模に関わらず購入は可能ですが、上記の市場原理を理解のうえ、検討が必要です。

L = Leader or Laggard

Lは主導銘柄か、停滞銘柄か、という意味です。

主導銘柄とは、時価総額が大きい企業ではありません。

業界全体を牽引し、最高の四半期EPS成長率及び年間EPSの増加を示し、ROE(株主資本利益率)も最大で、利益率や売上高成長率もずば抜けて、株価の動きも活発な企業のことだと言われています。

チェックリスト

  • 業界内で上位2-3位の主導銘柄を狙う
  • レラティブストレングス指数が80以上(大化け銘柄の平均は87)

メモ

  • 共振株(=おこぼれ企業)には投資しない
  • レラティブストレングス指数が60以下の企業に投資しない

 

レラティブストレングス指数とはIBD独自の評価法で、ある特定の銘柄の値動きを市場の残りの銘柄と過去52週に渡り比較して、1〜99まで指数化したもの。99が最高で、70以下は市場全体の中で足を引っ張っている銘柄ということになります。

レラティブストレングス指数が良くても、次の絶対条件は守る必要があります。

絶対条件

  • 正しく形成されたベースや揉み合いからブレイクアウト
  • ピボットポイント(正しい買値)で買う
  • ピボットポイントから5〜10%上昇したら銘柄は避ける
  • 買値から8%下落したら停滞株と見なして損切りする

また、市場が調整局面入りした場合、新たな主導銘柄を探すことも重要です。

新たな主導銘柄の特徴

  • 上昇トレンドで一時的に起こる調整時に、最も下落率が少ない
  • 市場の下落が最終局面を迎えたあとに、最初に新高値をつける
  • 一級品の銘柄は下落局面から上昇トレンドへ変化後、最初の3〜4週の間に新高値をつける

これらが、正真正銘の先導株であり、理想的な株の買い時期と言われています。

I = Institutional Sponsorship

Iは機関投資家による保有、という意味です。

株価を押し上げるには大きな需要(=買い)が必要です。その最大の需要源となるのは機関投資家です。

チェックリスト

  • 最近の四半期で、機関投資家数が着実に増加しているか
  • 直近の四半期で、機関投資家数が著明に増加しているか(特に重要)
  • 株主となった機関投資家は優秀か

メモ

  • 機関投資家による保有が増えすぎた株『過剰保有』銘柄は、大規模な売りが起こる可能性に注意

主力企業の株式売買の約7割が機関投資家による売買で、占められています。

これこそが、大きな値動きの裏に隠れている持続的な力だと言われます。

M = Market Direction

Mは株式市場の方向という意味で、市場の方向性の見極め方です。

これまで紹介したCAN-SLIMの6つの条件全てを満たしても、マーケットの方向性を見誤れば意味がありません。

特に市場が調整局面を迎えた場合、4銘柄のうち3銘柄は平均株価と一緒に下落すると言われています。

マーケットの方向性を判断する最善の方法は、主要な平均株価3〜4種類の日足チャートで価格と出来高が日々どのように変化しているのかを注意深く観察することです。

さらにオニールは著書の中で次のように述べています。

市場の将来の動きを予測したり言い当てることが株式市場の熟練者への道ではない。過去数週間で実際に市場で何が起こって、現在は何が起こっているのかを知って理解することが正しい道なのだ。

オニールの成長株投資法 P338

マーケットの方向性(天井と底)を見極める手法は次のとおりです。

マーケットの天井を見極める方法

チェックリスト

  • 株価は寄り付きで強く引けで下落する傾向にある
  • 前日より出来高が増加、かつ指数が0.2%以上下落する『売り抜け』の状態を示す
  • 上記売り抜け日が4〜5週間で3〜5日起こる(上昇トレンド中に起こる)
  • 4〜5週間で明確な売り抜け日が4〜5日あると、その後はほぼ必ず市場全体が下落する
  • 2〜3週間という短い期間で売り抜け日が4日起こるとさらに注意
  • 売り抜け日は1つの指数で確認されれば十分
  • 上昇を先導していた先導株が下落を始める
  • CANSLIMを満たした銘柄を正しい買いポイントで買った直近の銘柄が伸びないものが多い
  • 低価格でより投機的なボロ株が浮上し始めたり、オールドエコノミーが堅調になる

メモ

  • 売り抜け日がリセットされる場合は、カウントから25営業日経過時、または、カウントした日の終値から5%上昇した時
  • 主要株価指数の大きな乖離に注目し、ある指数は上昇したのに、別の指数は下落したなどの動きを探す
  • 上記の例として、機関投資家は30銘柄しかないNYダウを意図的に上昇させ、NASDAQやハイテク銘柄を大量に売って手仕舞いすることがある

 

マーケットの底を見極める方法

チェックリスト

  • フォロースルーデイを確認する(Follow-through day)
  • フォロースルーデイは株価上昇を試みた4日目〜7日目に、いずれかの主要指数が前日よりも出来高を伴って上昇した日とする
  • フォロースルーデイのカウント1日目となる上昇の試しは、主要な株価指数が下落の後に上昇して引ける日とする
  • 前日より平均株価の上げ幅が少ない場合、反発が弱いサイン
  • まれに3日目にフォロースルーデイを迎えることもあるが、その場合は1〜3日目が全て強い上昇か、強い出来高増加を伴って1.5〜2.0%以上の上昇が求められる

上昇の試しが失敗することを暗示するサイン

上昇の試しに失敗したときは、手持ちの株をさらに売った方が良いとされています。

チェックリスト

  • 株価が3〜5日目に株価が上昇するものの、前日より出来高が少ない
  • 平均株価の上げ幅が前日より少ない
  • 平均株価が前に付けた高値から直近の安値の値幅の半分も回復していない

書籍について

今回ご紹介した CAN-SLIM投資法を詳しく知りたい方は、ウイリアム・J・オニールの著書『オニールの成長株発掘法』をご覧ください。

この著書は600ページ超と、少し初心者には読みづらい本です。

初めて読む方は、最初に掲載されてる100のチャート集は読み飛ばして、CAN-SLIMの解説から読み進めると良いと思います。

またその他の著書として『オニールの相場師養成講座』も入門編としておすすめです。

加えて、売りのタイミングや空売りについて勉強したい方は「オニールの空売り練習帖」という著書もおすすめです。

-CAN-SLIM, 投資初心者