この記事では
- 注目肥料銘柄3社の決算を紹介します
- 今後の肥料銘柄の展望について考察します
2022年に最もパフォーマンスの良いセクターの1つである肥料銘柄は、ロシアのウクライナへの侵攻を受けて、株価が急騰しました。
その後の株価は一旦ピークはつけたものの、引き続き業績は好調で、今後も注目のセクターと言えます。
そんな肥料銘柄の中において、注目の3企業について、第1四半期決算の内容をの決算発表がありました。
メモ
- CFインタストリーズ(ティッカー:CF)
- ニュートリエン(ティッカー:NTR)
- モザイク(ティッカー:MOS)
上記3企業は、筆者が注目する肥料銘柄です。
目次
CFインタストリーズ 第1四半期決算
まず、決算の概要です。
https://twitter.com/t_noeru/status/1521956417959194624
✅売上高:28.7億ドル(予想25.9億ドル)
✅売上高成長率:+174%(YoY)
✅EPS:$4.21(予想$4.35)
✅EPS成長率:+501%(YoY)
EPSは市場予想を下回りましたが、引き続き高成長を維持しています。
売上高
売上高は2021年第4四半期決算(10~12月期)から加速し、今期は前年同期比+147%成長を達成しています。
また、次期第2四半期(4~6月期)のアナリスト予想は34.6億ドルとなっており、仮に予想通りであるなら前年同期比+118%成長を達成します。
今後も穀物価格の変動に伴い、アナリスト予想も変化していきそうですが、予想が上振れていくと好材料だと考えます。
また、売上総利益率も前年同期の27.6%から59.2%に改善されています。
価格上昇に伴い、利益率も大幅に上昇していることが伺えます。
EPS(1株あたりの当期純利益)
EPSは市場予想を下回りましたが、引き続き高い成長率をみせています。
20201年Q4(10月~12月)から急激に利益が増加していることが分かります。
新型コロナウイルス感染症による規制も徐々に解除され、世界的な経済再開が後押しとなり、そこにロシアによるウクライナ侵攻という地政学的な要因も加わり、肥料の需要が高くなっていることが想像されます。
2022年年間EPSの予想は$19.07で、前年比191%成長です。
今後もこのEPSの成長力が維持できるのか、それとも鈍化していくのかで、株価の推移も変わっていきそうです。
ニュートリエン 第1四半期決算
まず、決算の概要です。
https://twitter.com/t_noeru/status/1521601722669420549
✅売上高:76.6億ドル(予想76.2億ドル)
✅売上高成長率:+64%(YoY)
✅EPS:$2.70(予想$2.72)
✅EPS成長率:+831%(YoY)
EPSは市場予想を下回りましたが、引き続き高成長を維持しています。
※ツイートでは「EPS〇」と表記していますが、市場予想を下回り「EPS✖」に訂正いたします。
売上高
前年同期比の成長率は、2021年第4四半期と比べて若干下がったものの、全体的には右肩上がりの成長です。
次期第2四半期決算のアナリスト予想は153.2億ドルとなっており、仮に予想通りであるなら前年同期比+57%成長を達成します。
この企業もいつまで、この成長力を継続できるかポイントになりそうです。
EPS(1株当たり当期純利益)
ESPの高い成長力を維持しています。
CFインタストリーズと同様に、前期比(2021年Q4)で、EPSが若干鈍化しているのが、気になります。
2022年年間EPSの予想は$16.85で、前年比171%成長です。
四半期EPSと共に、この成長率が維持、または伸びていけば、株価上昇の余地はありそうです。
モザイク 第1四半期決算
まず、決算の概要です。
https://twitter.com/t_noeru/status/1521229328079417344
✅売上高:76.6億ドル(予想76.2億ドル)
✅売上高成長率:+64%(YoY)
✅EPS:$2.70(予想$2.72)
✅EPS成長率:+831%(YoY)
EPSは市場予想と一致し、売上高は市場予想を下回りました。
EPSと売上高の成長率は高水準にありますが、アナリストの期待値が高いことが、市場予想を下回った要因かもしれません。
売上高
売上高はきれいな右肩上がりの推移をみせています。
同様に、売上高成長率(前年同期比)も堅調です。
次期第2四半期決算のアナリスト予想は56.7億ドルとなっており、仮に予想通りであるなら前年同期比+102%成長を達成します。
引き続き、高成長を期待したい銘柄です。
EPS(1株当たり当期純利益)
EPSについても、堅調に伸びています。
成長率をみると、2021年中に一度突き抜けて、その後成長率は下がっていますが、依然高水準であることには変わりません。
2020年通期EPSの予想は$13.89で、前年比176%成長となります。
この数字を今後も上方修正していけるかが、更なる株価躍進のための要因となりそうです。
今後の見通し earnings call
肥料銘柄3社の決算リリース、決算発表後のEarnings callの内容について考察します。
共通する今後の見通しとポイントは次のとおりです。
ポイント
- 高い需要と供給不安により、穀物や油糧種子の価格高騰
- 世界の穀物在庫の減少により、今後も高い需要が継続
- 天候が許す限り、生産者の旺盛な需要も継続
上記のとおり、農作物であるからには、天候不順などのリスクはあるものの、市場では高い需要と供給制限により、価格上昇が起こり、その恩恵を肥料メーカーも享受しているようです。
ポイントとなるコメントには次のようなものがありました。
現在の市場動向と今後の見通しについて
- 世界の農場市場は、ロシアとウクライナの紛争の影響を反映している
- ロシアは世界の窒素、リン酸、カリの輸出20%を占める
- ベラルーシを含めると世界のカリの供給の40%が危機に瀕している
- ロシアとウクライナでは、世界の小麦と大麦の25%以上を供給し、その他多くの穀物が供給されている。
- 上記のとおり、穀物や肥料については、紛争による供給不安で価格上昇が続いている
- 世界の穀物在庫は減少しており、その補充には少なくとも2~3年かかると予想され、各上昇に拍車をかけている
- トウモロコシ、大豆、小麦、の先物価格は過去10年平均を50~90%上回る
- 欧州の窒素肥料メーカーは天然ガス価格の高騰により収益性が厳しく、欧州での生産は限定的になる
- 世界第2位の小麦の生産地であるインドでは、モンスーンシーズンが良好により、来シーズンの農家需要が下支えとなる
- 作物価格の上昇による収益増が、生産者の作付面積増加への強い動機付けとなり、旺盛な需要を見込む
- 農業と肥料市場に影響を与えている供給問題は2022年以降も続く可能性がある
市場動向としては、肥料メーカーにとって引き続き好環境が続くようです。
積極的に設備投資を行い、生産拡大を狙いたいところではありますが、過剰な設備投資は、需要が冷え込んだ際のリスク要因となることも考える必要があります。
2023年以降の需要がまだまだ予測できない部分もあり、難しいオペレーションが必要となりそうです。
インドが小麦の輸出停止を発表
5月14日時点のニュースですが、世界第2位の小麦生産国であるインドが、小麦の輸出を停止するとのことです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-05-14/RBUSRRDWX2PX01
この理由は、インド国内の食糧安全保障を万全にするための措置であるとのことです。
他国の要請があった場合には、許可する場合もあるとのことですが、逼迫する世界の供給網にさらなるプレッシャーがかかることは間違いありません。
株価について
3社の株価については次のとおりです。
✅CFインダストリーズ(週足チャート)年初来+46.7%(5/13終値)
✅ニュートリエン(週足チャート)年初来+31.6%(5/13終値)
✅モザイク(週足チャート)年初来+58.5%(5/13終値)
上記3社共に、コロナショック後は徐々に株価が回復し、2022年2月末のウクライナでの紛争をきっかけに株価が急騰しています。
直近では、株価が市場全体の相場に影響され、値動きの激しい展開となっています。
現在の株価水準を保ち、次のベースパターンを形成することができれば、次の新高値を狙っていける展開になるかもしれません。
当然、今後の需要の変動や収益性の悪化などにより、株価が急落する危険性もあるため、引き続き注視が必要です。
まとめ
肥料銘柄3社の第一四半期決算の内容をもとに、今後の穀物・肥料の市場動向について考察してきました。
最後に、ポイントをまとめると次のとおりです。
ポイント
- 肥料銘柄の業績は高い需要と価格上昇に支えられ、今後も堅調と予測される
- 天候不順と2023年の業績予測、市場動向が今後の気になる点
今後もニュースに株価が一喜一憂する銘柄ではありますが、2022年においては非常に期待の持てるセクターの1つであると考えます。