4月20日にテスラ社の第一四半期決算がありました。
予想を大きく上回る素晴らしい決算です。
結果は売上高、EPS共に市場予想を上回り◎。決算発表後のアフターマーケットでは5%超の上昇をみせました。
ガイダンスに大きな変更はなく、『数年後には年平均50%の自動車納車台数の伸びを達成する』と発表されています。
それでは、それぞれ詳しく見ていきます。
(YoY:前年同期比)
売上高
✅売上高:187.6億ドル(予想177.6億ドル)
✅売上高成長率:+81%(YoY)
インフレによるコスト増やサプライチェーンの混乱が続く最中、今期も着実に市場予想をクリアしてきました。
テスラ社の時価総額は4月18日時点で、約1兆380億円です。そんな企業が前年同期比50%上昇をみせていることは、本当に驚きです。
※アップル社の時価総額は約2兆6939億円(4/18時点)
また自動車部門売上高は次のとおりです。
✅自動車部門売上高:168.6億ドル
✅自動車部門売上高成長率:+87%(YoY)
今回の決算の中で注目ポイントの1つは、売上総利益率です。
売上総利益とは、売り上げから商品の原価を引いた利益のことで、粗利(あらり)、粗利益(あらりえき)ともいいます。
売上総利益を売上高で割って計算したものが売上総利益率で、同業他社との仕入れや製造などの競争力を比べることができます。
インフレによるコスト増に加え、ドイツのベルリン工場、アメリカのテキサス工場の操業開始により、利益にプレッシャーがかかると予想されていましたが、順調に右肩上がりの伸びを見せています。
EPS(1株あたりの当期純利益)
✅EPS:$3.22(予想$2.26)
✅EPS成長率:+246%(YoY)
現在の市場環境下において、この成長率はトップクラスといえます。
他の自動車企業、ハイテク企業に追随を許さない成長力です。
以下EPSの推移です。
純利益については、33.2億ドル(+658%YoY)となりました。
営業利益率
✅営業利益率:19.2%(前年同期は5.7%)
営業利益率は過去最高を記録しました。
前回決算時のEarnings Callでは、資材や配送コストが、かなり営業利益を圧迫しているとのコメントがありました。
そして、同じくドイツのベルリン工場とテキサス州のフリーモント工場においても、生産ラインが稼働し始めたばかりで、利益率が悪いとのコメントもありました。
そのような状況下において、営業利益率を伸ばしていることは、とても好印象です。
今後はFSD(Full Self-Driving)と呼ばれる自動運転のソフトウェアや、テスラ保険(自動車保険)などの販売により、利益率が高まるとも言われています。
これらの商品がいつ利益に反映するか、今後も注目していきたいと思います。
営業キャッシュフロー・フリーキャッシュフロー
✅営業CF:39.9億ドル(+143% YoY)
✅フリーCF:22億ドル(+660% YoY)
キャッシュ創出も堅調に向上しています。
ドイツのベルリン工場や米テキサスのオースティン工場などの新工場稼働に向けて、相当な設備投資が行われているにも関わらず、凄い数字です。
自動車生産・納車台数
テスラ社にとって、自動車の生産台数、納車台数は非常に重要な指標となっています。
今期の結果は次のとおりとなります。
✅生産台数
【モデルS/X】13,109台(-19% )
【モデル3/Y】292,731台(+79% )
Total 305,840台(+70% )
✅納車台数
【モデルS/X】11,766台(-38% )
【モデル3/Y】296,884台(+84%)
Total 308,650台(+71% )
今期も前年同期比で60%を超える水準で、生産・納車台数が増加しています。
ガイダンスでも示しているとおり、「年平均50%増の納車台数を達成」を実現するために、着実に進んでいます。
なお、モデルS/Xはセダンタイプの車、モデル3/YはミニSUVタイプの車です。
前回決算時も、モデル3/Yの方が利益率が良く、生産と販売も増えているとのことでした。
その他の事業
現在販売している車種の他に、テスラ社では、「サイバートラック」を開発しています。
今期のEarnings Callにおいて、イーロン・マスク氏は「2023年に量産体制に入る」とコメントがありました。
また、イーロン・マスク氏の非常に気になるコメントとして、開発中である「ロボットタクシー」について言及がありました。
「ロボットタクシーは自動運転に高度に最適化されたもので、「ハンドル」や「ペダル」はありません。さまざまなイノベーションがあり、非常にエキサイティングだと思います。1マイルあたりのコスト、1キロあたりのコストを全て考慮した上で、最も低いコストを達成しようとしています。2024年の量産体制を目指す、非常に強力な商品になると思います。」
さらに開発中の「オプティマス」(人型ロボット)については、「今後数年のうちにオプティマスの重要性は明らかになるでしょう。最終的には自動車事業よりも、FSD(Full Self-Driving)よりも、価値があることが理解できるはずです。」と他の役員からコメントがありました。
「ロボットタクシー」「オプティマス(人型ロボット)」という響きだけでも非常に気になるところですが、今後の詳細の発表が楽しみですね。
ガイダンス
前述のとおり、テスラ社の『数年後には年平均50%の自動車納車台数の伸びを達成する』というガイダンスに変更はありません。
しかしながら、次の第二四半期決算に向けて、Earninngs Callにおける気になるコメントがありましたので、ご紹介します。
- 当面の見通しとして、第二四半期については、COVID関連のシャットダウンにより、上海工場で約1カ月間の生産量を失った。
- 生産は限定的なレベルで再開しており、できるだけフル生産に戻せるよう取り組んでいる。
- このため、第二四半期の総生産台数や納車台数に影響を与えることになる。
- ドイツのベルリン工場と米テキサスのオースティン工場の立ち上げに伴い、これらの非効率性が第二四半期の売上総利益率に反映され始める。
- 下半期も引き続き財務体質の強化に努め、50%以上の成長率は達成可能だと考える。
つまり、上記のことから次の第二四半期決算では次のことが予想されます。
- 生産台数や納車台数が減少する可能性がある。(または成長率が鈍化する。)
- 新工場立ち上げのコスト増により、売上総利益率が減少する可能性がある。
これらの要因を踏まえながら、次の第二四半期決算を確認していきたいところです。
テスラ社は非常に魅力的なストーリー性のある企業であり、またそれを着実に実行に移している企業だと感じます。
足元の、相場環境が悪く、なかなか株価は上がりにくい状況にはありますが、今後も期待したい企業ですね。